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忘れられた巨人 カズオ・イシグロ の感想 [読んだ本]

ネタバレ満載、未読の方はご注意ください。

忘れられた巨人が動き出すとは、雌竜クエリグの吐く息=霧によって忘却の彼方にあった憎しみ、復讐、殺戮の記憶が再び蘇り、戦乱が起こること。

主人公はアクセルとベアトリスという老夫婦。ブリトン人の村で暮らしている。この村ではなぜか、村人たちは過去のことをすぐに忘れてしまう。過去とは、次第に薄れていき、沼地の濃い霧のようになっていくもの。アクセルは妻に呼びかける時、必ず「〇〇だよ、お姫様」と言うところが私の感覚では違和感がある。だって、相手はおばあさんだよ[たらーっ(汗)]そしてアクセルとベアトリスは、自分たちに息子がいて、どこか別の村に住んでいるのは覚えているけれど、顔や声、名前すら憶えていない。しかしある日、二人は息子の村を探す旅に出た。

夫婦は若いころの記憶もおぼろげなのだが、旅の途中でアクセルは戦士ウェスタンの仕草や戦いぶりなどを見ると、まるで自分もかつてそうしていたかのようにその意味を知る。あるいは思い出す。今はただの年老いた農夫だけれども、かつてはアーサー王に仕えたかなり有能な戦士だった。というのが後半明らかになってきて、びっくり。クエリグの息が霧となり、人々の記憶=壮絶な戦いや憎しみの記憶を忘れさせ、ブリトン人とサクソン人という対立する人々が仲良く暮らしている世界。クエリグを倒す使命を持ったサクソン人戦士ウィスタン。ブリトン人でアーサー王の甥であり、その昔クエリグ退治を命じられたが今はすっかり年老いた、重い鎧を身に着けた騎士ガウェイン。このガウェイン卿もタダの老いぼれではなく、アクセルとベアトリスと少年を修道院で危ない所から救ったり、実は、雌竜クエリグの守り手だったり、いろいろ深い。最後の対決は、できればして欲しくなかったなぁ[もうやだ~(悲しい顔)]

クエリグが倒され、(このあたり、けっこうあっさり)忘却の霧がなくなれば、老夫婦の記憶も戻る。
ベアトリスは、一時アクセルに不実だった事があり、それが原因で息子は出ていったこと。その後夫婦は和解したが、息子は疫病に倒れたこと。息子の墓参りに行くのをべアトリスに禁じたことをアクセルは思い出した。
島へと渡る船着き場で、ベアトリスとアクセルは二人同時ではなく、別々に島へ渡ることになり、物語は終わる。
やっぱりその島へ二人で一緒に行く事はできないという結末だった。

主要人物5人の内、3人が老人というお話でした。
カズオ・イシグロ作品を読んだのは「わたしを離さないで」「日の名残り」に続き3冊目でした。

どの作品も割と淡々と話が進むのに、読み終わるとなぜか「おおー[exclamation&question]」っとなっています。すごいかもしれない。
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